ランデヴー
翌日も、私は定時を過ぎても仕事を続けていた。
来週の締め日までに終わらせたい仕事がいくつかあったからだ。
だがそれとは別に、私の中には家に帰りたくない気持ちがあった。
1人になると、途端にあの静寂に押し潰されそうになる。
寂しくて苦しくて不安で……眠れない。
「坂下さん……?」
ふと手を止めて考え込む私の隣から、不意に倉橋君の声が聞こえた。
私は弾かれたように顔を上げ、「何?」と彼に目を向ける。
「いえ、あと何が残ってるのかと思って……」
「あと……?」
昨日の繰り返しのようにそう聞かれ、心が飛んでいた私はすぐに考えをまとめることができない。
えっと……何が残っていたんだっけ。
そう考え、自分が今何の仕事をしていたのかもわからなくなり、愕然とした。
こんな調子になったのは、今日初めてのことではない。