ランデヴー
もう……この指が私の涙を拭ってくれることは、ないのだ。


そう思うと、身を切るような切なさに包まれる。



涙で揺れる瞳で陽介の顔を縋るように見つめると、彼も苦しそうに眉根を寄せて私を見ていた。


お互いの視線を、じっと絡ませる。



それはもう、以前のように熱い眼差しではない。


もう2度とこうして見つめ合う日は、来ないだろう。



ゆらゆらと揺らめく視界の中、陽介の顔がゆっくりと近付いてきた。


その唇が、ほんの一瞬私の唇に触れる。



「ごめん……。たくさん、ごめん……。幸せに、なって」


陽介はそう言って私の体を一瞬だけキュッと抱き締めると、思いを断ち切るかのようにすぐに離れた。


そして。
――この家を出て行った。



急に1人その場にぽつんと取り残された私は、呆然と陽介が扉を閉める音を聞いていた。


途端に訪れる静寂に、胸が張り裂けそうになる。
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