ランデヴー
目の前にぶら下がる幸せを選ぶことができない私は、ただの臆病者なのかもしれない。


でもそれを掴むには、まだまだ気持ちが足りない。


そんな状態で彼の元へ行くことは、やはりできない。



私の強い意志を感じとったのか、倉橋君はしばらくの沈黙の後に、ふっと顔を緩めた。


憂いを帯びた瞳が、瞬間柔らかくなる。



「何となく……わかってました」


「……え?」


「最近の坂下さん何だか変わったし……もう俺の出る幕じゃないかな、って」


そう言われ、私はふと眉を寄せる。



違う、そうじゃない。


倉橋君が用済みとか、そういう話ではないのだ。



「倉橋君にはすごく感謝してる。私が辛い時、ずっと傍にいてくれた。でも……だからこそ、もう倉橋君に頼る訳にはいかないって思うの。ごめんなさい……」


上手く説明ができなくてもどかしい。


私が強い想いを込めて真剣に倉橋君の瞳を見つめると、彼は何かを諦めたように小さく溜息を吐いた。
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