ランデヴー
倉橋君は、至って普通だった。
会議の間も、席に戻った後も、雑談をする時までも。
それなのに……。
「坂下さんって……香川さんと何かあるんですか?」
人気が少なくなったフロアでの残業中、彼は不意打ちのようにそう聞いてきた。
今日は月末なので、請求データの処理が終わるまで帰れない。
今このチームで残っているのは、下っ端組の私と倉橋君だけだった。
そんな時に突然問い掛けられたその言葉に、もしかしたら倉橋君にまで心臓の音が聞こえたんじゃないかと思うくらい、私の心は跳ね上がった。
「え……何で?」
平静を装ってそう聞くのがやっとの私は、挙動不審になってないか、とか声が上ずってないか、という思いが先に立ち、気が気じゃない。
「何で、って……さっき会議室で……」
そこまで言って、倉橋君が口を噤む。