花は野にあるように
「…………ゃ。」


ようやく、小さな声が出せた僕はリョクの唇から離れて、目を開けた。


「…………すっげぇ凶悪的に可愛い。
お前、それって反則だぞ。」


間近で僕の顔をまじまじと見ながら、妙に真剣な顔でリョクが言う。


「こんな表情しておきながら襲うなって言うのって、腹減らして飢え死にしそうな虎の前に生肉置いて、喰うなって言ってるのとおんなじなんだぞ?」


リョクがそう言いながら、僕にまた顔を近付けて、今度はただ触れるだけの軽いキスをして、僕から離れた。
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