にょんさま。
にょんさま。



 風呂あがりの髪をタオルで拭きながら、鏡の前に座る。化粧水を手のひらにとった時だった。す

「にょー」

 空耳?

 気のせいかと思ってしまうくらいに小さな小さな声。

(疲れてるのかな)

 忍は小さな疑問の芽は気にせずに肌の手入れをし始めた。

 すると、また。

「にょにょー♪」

 明るいトーンの意味不明な声。言語や音の響きからして人間的ではない。

 忍はきょろきょろした。

 天井の一角に奇妙なぽっこり。軽くびくっとする。

 すすす、とぽっこりが動き、忍の方に顔を向けた。

 フリーハンドで書いた顔文字のようなニコニコ顔。

(^∇^)「にょにょにょー」

「*※〇%☆#?」

 声にならない声で仰天し、忍はその顔を見て凍結する。

 見てはならないものを見てしまった気分。

(な、何!?これ!?)

 すると、ぽっこり顔は忍のその反応にしょんぼりした。

(;_;)「にょー?」

 何なんだろうか。

 忍はしばし動けずに、やがて問いかけた。

「何してるの?あなたは何?」

(・ω・)「にょー(にょんさまです)」

 言葉は相変わらず「にょー」だけだったが、今度はふわっとニュアンスが伝わってきた。

「にょん?」

(*゚▽゚*)「にょにょー(にょんとお呼びください。よろぴこ♪)」

 意味不明なのに、意味不明だからか、意味不明に人懐こい。

 新種の生物だろうか。



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