にょんさま。
「まるくて猫みたいなもの?」
昼休み。忍の話を聞いた四季はきょとんとして瞬きした。忍の額に手を当てる。
「…平熱」
「うん。熱はないよ」
さらりと答える。四季は忍を心配そうに見た。
「だって僕がそんな話をするならともかく、忍がそんな話をするって…何かおかしい」
ロマンティストの四季は時々夢を見ているようなことを口にすることがあるが、忍がそんな非現実的な話をすることはまずない。
いつもほわーんとしている四季でさえ、忍をそう認識しているくらいである。
「…でも忍、猫はまるくなるけど、まるくないよ?」
四季の問いも何処かズレている。そこが四季なのだが。
にょんと四季の方が話が合うかもしれない。
「そうじゃなくて…まるいけど、存在が猫みたいなの。──にょん、いる?」
自分と四季の他に近くに誰もいないことを確認して、忍は昨夜の不思議生物を呼んだ。
学校にも何故かついて来ようとするため「にょんみたいなのがついて来たら大騒ぎになるから、出来るだけ隠れてて」とお願いしたのである。
(*゚▽゚*)「にょー♪(呼ばれまして。よろぴこ♪)」
にょんは忍と四季のいるテーブルの上に、ひょっこり現れた。
鏡餅のようなまるい物体に顔文字のような顔。昨日と違うのは、猫耳のようなものがついている。
四季はそれを見て喜んだ。
「わぁ、ほんとに猫だ。可愛い♪」
無邪気である。忍はやっぱり四季だ、と思ってしまう。
「昨日は猫耳はついてなかったでしょう」
忍がすかさず指摘すると、にょんは猫耳を微妙に引っ込めた。
(;・ω・)「にょー…(猫みたいと言われたので猫みたいになりました)」
「どうして猫みたいになるの?」
(;-ω-)「にょー…(わからないでし)」
にょんは忍の問いに困って小さくなってしまった。