SWEET HOME
-Epilogue-
奥の部屋へ続く小汚いドアを開けると、


「おー美希、久々じゃん」


ちょうどメーク中だった金髪の女が、鏡越しに笑顔を見せた。


あたしは小さな紙袋を、真剣にアイラインを引いている横顔に差し出す。


「お土産」


「わーサンキュー。かわいいー!」


早速袋の中身を確認すると、はしゃいだ声を上げた。


空港の免税店で買ったシャネルのグロスは、色白の沙織に似合いそうなパールの強いピンク。


「どーだった?今回はミラノだっけ」


「んー普通」


「いーよねー商社の男。いろんなとこに連れてってもらえてさー」


「独身だったらもっといいんだけど」


「だねー」


しょうがないって顔で笑う沙織はこの店で知り合ってからまだ日が浅いけど、あたしの事情を全部知っている。


派手に見えるけど、優しくて普通の子。


ここの仕事だって、幼馴染の彼との結婚式を挙げる資金を貯める為にやっているだけ。


あたしとは違う。

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