琥珀色の誘惑 ―日本編―
『殿下、フロントに例の女が来たそうです』


 ヤイーシュはそう言うと内線電話の受話器を下ろした。


『あまり気乗りはせんな』

『……婚約破棄は、殿下ご自身のご決断です』

『判っている』


舞の服を脱がせ、下着姿にしてしまった。
清らかな処女の肌を目にした後で婚約を破棄するなど、男のすることではない。

今時の日本人男性が聞いたら鼻で笑うようなことを、ミシュアル王子は本気で後悔していた。


だが、舞は泣いていた。愛していると言っても、泣き止む事はなかった。

これまで、女性から断わられたことなど一度もない。

慎重に相手を選び、幾多の経験を積んできたのも、舞を妻に迎えるためだ。

直接、逢いさえすれば、舞も喜んで求婚に応じると、信じて疑わなかった。


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