琥珀色の誘惑 ―日本編―
近づいたミシュアル王子は、無言のまますくうように舞を抱き上げる。


「きゃっ!」

「迎えに来たぞ。私に掴まっていろ」


熱を帯びた王子の声は、耳から直接流れ込み、舞の鼓膜を震わせた。


この場で彼に逆らうほど、舞も無鉄砲ではない。
公に恥を掻かせたら、それこそ国際問題に発展する可能性もある。
万に一つも“有事”でも引き起こそうものなら、後世に“傾国の悪女”として名が残るのは間違いない。

それくらいなら“シークに攫われた日本人女性”として名を残す方がマシだと思う。


だがこの時、公園の外では“今世紀最大のロイヤルロマンス”に大歓声が沸き起こっていた。


< 140 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop