琥珀色の誘惑 ―日本編―
母が世間とずれているとすれば、理由はひとつ。

母・月瀬美紗子(つきせみさこ)は旧姓・三条美紗子(さんじょうみさこ)と言い、戦後解体された旧華族の出身であった。
母方の祖父は伯爵家の若様として育ったらしい。
戦後生まれで四十五歳の母には『よく判らないんだけど』と言うが、独特のテンポは絶対にその影響だ、と舞は思っている。

ちなみに、母の実家は静岡で、富士山が見える田舎だ。
そこには広大な敷地と、築百年は超える古いお屋敷があった。

都内にある父の実家には滅多に戻らないのに、母の実家には年に二度ほど一家で帰省する。
その時は必ず、舞だけ別の部屋に通されるのだ。

それもなぜか、屋敷で一番立派な部屋に。

座敷童子でも棲んでいそうな不気味な日本家屋に、家族と離れて寝かされるのが舞は堪らなく嫌だった。

そういう仕来りとか言われて、納得して来たが……今思えば、その辺りもかなり怪しい。


厳格な父も、穏やかな母も、舞は大好きだった。

でも……砂漠の国に連れて行かれ、王子様のハーレムに放り込まれるなんて、そう簡単には納得できない。


でっかいミシュアル王子がSPふたりを引き連れ、公務員宿舎から引き上げた。

その直後、舞は父に噛み付いたのである。


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