琥珀色の誘惑 ―日本編―
「借りる? 愚かな。あの車はオーダーメードだ。運転席は私のベストポジションに。助手席は君の体型に合わせてシートから作らせた」


なんと、舞の二十歳の誕生日に合わせて、発注したと言う。

確かに特注シートでなければ、舞の体をすっぽり包み込める市販車なんてあり得ない。
外車だからだろうと思っていたが、大きな誤解だったようだ。

あのジャガーをオーダーメード……あまりのショックに舞は言葉も出て来ない。

そんな舞を顧みず、ミシュアル王子は何かを見つけ走り出した。


「舞! これは何だ!」


それは……水道だった。

横に普通の蛇口が付いていて、子供が手足を洗うのにちょうどいい高さだ。
上は飲料用である。
先端が丸くなっておりそこから水が真上に上がる。
蛇口は横に付いているタイプだ。

大体、何処の公園でも見掛けるものだった。


「水飲み場……ですけど」

「この水が飲めるのか?」

「……はあ」

「この国では、野外に設置された水飲み場で自在に水を飲んでも許されるのか!?」


ミシュアル王子の驚きぶりが舞には全く判らなかった。


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