琥珀色の誘惑 ―日本編―
「判ったわよ! ちょっとアル、この間まで“君”って呼んでたくせに、何で“お前”な訳?」

「検査結果の報告を受けた。お前は私の妻となるのに相応しい体だと証明された」


サングラス越しなのに、彼の視線を痛いほど感じる。
舞はミシュアル王子のキスを思い出し、背筋に電気が走った。


「そ、そんなこと、こんな場所で」


毅然と言い返すつもりが、声が裏返って自分でも情けない。


「月瀬舞、これよりお前は私の妻と同等に扱われる。私のことも夫として敬い、振舞うように。よいな」


言葉の内容に衝撃を受け、舞は窒息寸前の金魚のように口をパクパクしている。

桃子もミシュアル王子の台詞をどう捉えたのか、顔が真っ赤だ。


「つ、つまって……同等って、わたしをどうするつもりなのっ!?」


このまま大使館だかホテルだかに連れ込まれて、妻の役目を果たせと言われたら……。

多分、桃子と同じ考えが頭を駆け巡り、頬だけでなく耳まで熱い。

だが、ミシュアル王子は口角を上げ、笑みらしきものを浮かべると言ったのである。


「愚かな想像をするな。この私が、僅か三週間の我慢ができない男だと思っているのか?」


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