琥珀色の誘惑 ―日本編―
合コンにはお持ち帰りが目的のニセ学生も混じっているから、気をつけなさいね、と慣れたクラスメートが言っていた。
ひょっとしたら、と思わないでもない。

でも、この三人は本物だ、と桃子が保証してくれた。
なぜなら、桃子の恋人が彼らと同じ大学の卒業生で研修医なのだ。

この間は、舞の為の合コンだから、と桃子が彼にメンバー集めを頼んだのあった。


ヘラヘラ笑う男子学生を見ていると、舞は嫌なことを思い出してしまった。


三人のうちふたりは、トイレで舞のことを笑い話にしてた連中だ。
舞に聞かれていたなんて、思ってもいないのだろう。


(こんな連中と、話なんかしたくもないのに)


舞は心の中で呟いた。

面と向かって「この間、あんなこと言ってたでしょ!」と言えれば気が楽だ。
でも、舞には言えない。
桃子にも、彼らが舞の体型を揶揄して笑っていたなんて、言いたくなかった。

心の何処かで、“わたしなんか”という思いが消せないせいだろう。


「どうぞ!」


舞は椅子を引き、ミシュアル王子に着席を促した。
ついでに、ドンッとテーブルの上に水のペットボトルを置く。

王子が悠然と腰掛けたのを見て、舞も彼の右隣の椅子に座った。

その直後、ひとりの男子学生……名前はタケシと言っただろうか? が舞の右隣に座ろうとした。


後ろのテーブルから空いた椅子を取り、腰掛けようとした瞬間――


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