琥珀色の誘惑 ―日本編―
そこは超がつくほど有名なホテルだ。
世界的にチェーン展開をしていて、日本にも東京と大阪にあったと思う。

大使館員から……

『ホテルのフロントではご自身のお名前を告げてください。殿下のお名前や国名は決して口にされませんように』

と口が酸っぱくなるほど言われた。



「あの……月瀬舞と言います。あの……」


気後れするような格調高いカウンターに近づき、舞は名前を告げる。

その瞬間、フロントクラークの女性の目に驚愕の色が浮かんだ。


「は、はい。はい、ただいまっ!」


そう言うと、彼女は中に飛び込み、ひとりの男性を連れて出て来る。
ホテルの支配人だと丁寧な挨拶を受けた。
だが、揉み手をしながら愛想笑いを浮かべる様子は、いつぞやの病院長を思い出し、今ひとつ居心地が悪い。

そのまま、舞は支配人に案内され、直通エレベーターで最上階に通されたのだった。


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