この男、偽装カレシにつき
そう言えば私、センパイが女子の名前を呼ぶのを初めて聞いたんだ。


私のことなんて、いつもお前とか、オイとか、コラとか(?)呼ぶクセに。


なんで『ユキノ』は、あんな風に愛しそうに呼ぶの?
なんで『ユキノ』と間違えた私の髪を、あんな風にそっと撫でたの?


恋人…ではないと思う。
最近センパイと一緒にいる機会が増えたけど、周りには驚くほど女性の気配はなかったから。


だけど夢にまで見るってことは、センパイにとって相当特別な存在なんじゃないの…?



「―――どうかした?
深刻な顔して」


大野センパイが私の顔を覗き込んだ。


ここはファミレス。
一人でいたくなかった私は、結局純ちゃんたちと合流していた。


「こっち来ないって言ったクセに来たし。
橘センパイと何かあった?」


ズバリ核心を突いてきた純ちゃんに、私は慌てて首を振った。
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