この男、偽装カレシにつき
こんなもの、ポポイのポイってしてやるんだから。


こんなもの、こんなもの…。


放り投げればいいだけなのに、私の手はなぜか指輪を離そうとしない。
振りかぶったまま、体がピクリとも動かない。


こんなもの。
こんなもの…。


「捨て…」


捨ててやるんだから、そう口に出そうとしたとき。
目の前が一瞬にして涙で曇った。


「―――られるわけないっつーの…」


私はその場にうずくまった。
涙が溢れて止まらない。


捨てられるわけない。


だって、本当に本当に嬉しかったんだもん。


プレゼントを貰えたことはもちろん。
橘センパイが指輪をあげたいと思ったの女の子が、私だけだったってことが、嬉しくてたまらなかったの。
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