この男、偽装カレシにつき
あんなに猛ディフェンスされてるくせに、なんつー地獄耳!


「そ、空耳じゃないですか?」


そう強引にしらばっくれたものの。
さっき、ふと気付いてしまった自分の気持ちはごまかせない。


あんな無愛想じゃ芸能界は無理、なんて憎まれ口を叩いたケド。


本当はただ、センパイが時たま見せてくれるあのスペシャルな笑顔を、不特定多数のオンナノコに見せるのが嫌だっただけ。


もう私のものにはならないとしても、私だけが知っていたかった。


どうしよう。
やっぱり私まだ橘センパイのことがこんなに好きだ。


自分で仕向けたクセに。
オンナノコたちに囲まれるセンパイを見てると、さっきのにんじんなんかよりもずっと、苦くて堪らなかった。
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