この男、偽装カレシにつき
「ま、間違えましたっ」


ペコリと頭を下げて、慌ててエレベーターホールに戻ろうとしたとき。


「待って、チエちゃん」


突然、イケメンが私の腕を掴んだ。


え?


つんのめりながら振り返ると、彼は私を見て苦笑してる。


「君、チエちゃんでしょ?」


「…へっ?」


初対面の、しかもイケメンに名前を連呼されてパニクる。


なぜ私の名前を?


私の顔って、そんなに『チエ』っぽい?
それともまさか、顔に名前が書いてある??(んなわけないだろ)


「やっぱりチエちゃんだ」


イケメンはどこかで見たことがある笑顔を浮かべて、


「入って」


戸惑う私を、そのまま部屋の中に引っぱり込んだ。
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