王子様は囚われ王女に恋をする
再会
アリシアは深い眠りから覚めようとしていた。

でも動きたいのに体が動かせない。

いますぐに起きなければいけないという焦りでいっぱいなのに
頭が働かなくて何も考えられない。

「ん…」

石のように重たく感じる自分の体を
やっとのことで横向きに変える。

うっすらと目を開けると、見慣れない壁紙が目に入った。

しばらくぼんやりと見つめていたアリシアは
意識が戻ってくるにつれて恐怖に体が冷たくなってくるのを感じた。

明らかに城の中の部屋ではない。


「目覚めたようだな」


その声を聞いて、アリシアの体が凍りついた。

久しぶりに聞いた声でも忘れるはずがない。

声のしたほうに恐る恐る顔を向けると
そこには椅子に腰かけたトーマスがいた。


「叔父様…」


トーマスはゆっくりと立ち上がると
アリシアのベッドに近づいてきた。


「久しぶりだね、アリシア。
会いたかったよ」


微笑んだトーマスはアリシアのいるベッドに腰掛ける。


「しばらく見ない間にまた美しくなったようだな」


叔父の手が頬に伸びてきて
アリシアは思わず体をすくませた。


「手荒な真似をしてすまなかった。
城から連れ出すにはああするしかなかったんだ」


優しく微笑む叔父を見ても
すべてを知っているアリシアは恐怖と憎しみしか感じなかった。

微笑んでいても、その瞳は笑っていない。

冷たい蛇のような視線に鳥肌が立ってくる。
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