王子様は囚われ王女に恋をする
アリシアは部屋に監禁されていた。

イライザが無事でいるかどうかだけでも確かめたかった。

アリシアはトーマスが姿を見せると懇願した。

「叔父様、お願いです。イライザに会わせてください。無事を確かめたいんです」

涙を浮かべたアリシアを見つめて、トーマスは微笑んだ 。

「涙も美しいな」

アリシアは頬に添えられたトーマスの手に体を強ばらせる。


「そう嫌がらずともよいだろう?私たちは夫婦になるんだぞ」

トーマスの腕がアリシアを引き寄せた。

(カイル様っ)

逆らうこともできずにいるアリシアを抱き締めると、トーマスはその白い首筋に唇を押し付けた。

もう耐えられないと思った瞬間、扉を叩く音がした。

「トーマス様!」

トーマスは動きを止めると外にいる部下に向かって声をあげた。

「なんだ?」

「セナールの兵がここを探り当てたようです。早く逃げた方が良いかと」

セナールと聞いてアリシアの鼓動が早くなる。

「分かった。いまいく」

トーマスは舌打ちするとアリシアを離した。

「続きはまた今度だ」

そういうと叔父は部屋を出ていった。

「カイル様、助けて…」

アリシアはその場に崩れ落ちた。
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