王子様は囚われ王女に恋をする
うつむいたアリシアの体が小さく震えていた。

『国を攻め落とした』

彼女の言葉が胸に刺さる。

捕虜でなければ何なのか?

その問いには今は答えられない。

カイルが思わず伸ばしかけた手を戻そうとした時
アリシアが顔を上げた。

エメラルドグリーンの大きな瞳に
いまにもこぼれおちそうなほどに涙があふれていた。

「…っ」

その顔を見た瞬間、カイルは衝動的に手を伸ばしていた。

華奢な体は腕の中にすっぽりと収まる。

「泣くな」

彼女の首筋に顔をうずめて囁く。

一瞬、アリシアの体がビクッと震えた。

「…カイル様?」

「僕は君にとっては敵国の王子かもしれない。
憎まれても恨まれても仕方ないと思ってる」

アリシアの体を離すと
その頬に流れる涙を指でぬぐう。

「でもこれだけは信じてくれ。
君を傷つけることはしない」

アリシアは訳が分からないというようにカイルを見上げた。

「おっしゃっている意味がよく分かりません…」

「そうだな」

確かにこれだけ言われても訳が分からないだろう。

「なぜそんなことを言うんですか?
これ以上あなたに優しくされたら、私は…」

そこまで言うとアリシアはハッとしたように口をつぐんだ。

「アリシア?」

アリシアの肌がみるみるピンク色に染まっていく。

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