王子様は囚われ王女に恋をする
「カイル様、今日はありがとうございました」
とても楽しかったです」

アリシアは心からお礼を言った。

「それはよかった」

カイルはそれだけ言うと
窓の外を見ていた。

「あの…、聞きたいことがあるんです」

「何だ?」

スカイブルーの瞳が彼女をとらえる。

「私を…捕虜と思っていないと言いましたよね?」

「ああ」

きっぱりと答えるカイル。

「それは…どういう意味ですか…?」

「そのままの意味だ」

その返事はアリシアの疑問を晴らすものではなかった。

「それじゃ分かりません。
なぜそんなことを言うんです?」

問いかけるうちに、自分の感情が抑えられなくなる。

「あなたは私の国を攻め落とした。
だから私は捕虜なのに、なぜそんなことを言うの?
なぜ優しくするの?私は捕虜でなければ何なんですかっ?」

最後まで一気に言いきったアリシアを
カイルは静かに見ていた。

何も答えてくれない王子に
自分がバカなことを聞いてしまったのだと感じる。

見つめられることに耐えられなくなったアリシアは
うつむいた。

「…もういいです。忘れてください」

何かを期待しそうになっていた自分に気づいて
心が沈んでいく。

相手は敵国の王子。両親を死に追いやって国の王子…。

もう幼いころの思い出に引きずられてはいけないんだ。

アリシアは膝の上で両手をぎゅっと握りしめた。

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