王子様は囚われ王女に恋をする
「アリシア、寝ぼけているのか…?」

カイルはアリシアの顔をのぞきこんだが、胸にぴったりと押しつけられてその表情はわからない。

カイルは自嘲気味に小さく笑った。

アリシアはきっと寝ぼけているんだと思った。でなければ、自分を嫌う彼女が抱き付いてくるわけがない。
アリシアをベッドの中に下ろすと首に回された細い腕を外そうとした。

その瞬間、アリシアの潤んだ瞳と目が合った。

とろんとした瞳で見つめられたカイルは理性が飛びそうになるのをなんとか持ちこたえる。

アリシアは目をそらさない。それどころが、カイルの頬にその白い右手を添えてきた。

カイルはたまらず、アリシアに頬を寄せた。

(イヤなら逃げてくれ…)

そう心のなかで思いながら、アリシアの柔らかい唇に自らの唇をそっと重ねる。

アリシアにも、もうこれが夢ではないと分かっていた。でも逃げようとは思わなかった。

カイルは慈しむようにアリシアの唇に触れた。

(カイル様…)

触れた部分から体温が伝わってくる。
触れるだけだった口づけは短いものだった。

唇が離れると途端に寂しさに襲われたアリシアはカイルを見上げた。

カイルは切なそうに微笑むと言った。

「そんな目で見ないでくれ。抑えが利かなくなる」

もう一度キスしてほしい。

アリシアはそんなことを考える自分に頬を染めた。

「アリシア、もう一度キスしてもいいか?」

カイルの言葉にアリシアはハッとして顔をあげる。

何も答えない彼女に、カイルは少しかすれた声で言った。

「逃げないなら、肯定ととる」

そう言った途端、さっきより少し強引に口づけられた。

「…んっ」

アリシアはカイルの体重を支えられずにベッドに背中から倒れこんだ。

ベッドに沈みこむようになりながら、カイルの徐々に深くなる口づけを受けていた。

アリシアの腕が背中に回された瞬間、カイルの中で今までこらえてきた彼女への思いが弾けた。
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