失恋ショコラ【短】
篠原に掛けられた苦労の数々にため息をつくと、鍋の中が沸き立っている事に気付いた。


慌てて火加減を下げた時、そういえば彼も肉じゃがが好きだったな、なんて事を思い出してしまった。


同じ講義を取っていた彼にある日突然話し掛けられたのは、大学卒業間近の頃。


彼は、バカみたいに生真面目で男性に慣れていなかったあたしの事を『可愛い』と言い、いつも優しく接してくれた。


就職してからも時々会うようになって、1年半前に彼に告白をされた時には戸惑いながらも頷いた。


だけど…


昨日の彼の隣には、自分(アタシ)とは正反対の可愛らしい女の子がいたのだ…。


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