失恋ショコラ【短】
「そうじゃなくて……」


「じゃあ、篠原櫂先生!」


「あのな……ペンネームじゃなくて、本名の方だよ。言っとくけど、『知らねぇ』とは言わせねぇぞ」


その要望の意図がわからなくて、益々眉間にシワを寄せたけど…


とにかく今は、大切な原稿の為に大人しく従う事にする。


「葛城龍司(カツラギリュウジ)先生」


「“先生”は余計だ。後、名字もいらねぇから」


あたしは小首を傾げながらも、また口を開いた。


「……龍司、さん?」


その直後、篠原は片手で口元を隠すように押さえながら、あたしから視線を逸らしてしまった。


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