主婦だって恋をする
「社員旅行なら、来年もあるじゃない……」
諭すように言った私に、夫は切ない微笑みを向ける。
「……成美が来てくれるのは最後かもしれないから」
ズキン、と胸が鈍く痛んだ。
この人にこんな顔をさせたのは、自分にほかならない……そんな罪悪感が、心に降り積もる。
――――集合場所である駅のロータリーには大きなバスが二台止まっていて、社員たちが挨拶を交わしながら、次々と乗り込んでいく。
「本当に大丈夫……?」
「あれ飲んだから、ばっちり」
ここへ来る途中、コンビニで買った栄養ドリンクを飲んだ夫はそう言って私に親指を立てて見せた。
そんなもので熱が下がるわけはないけど、朝よりは回復した様子なので私も見守ることにしたのだ。
「――成美!姫島さん!」
バスに乗り込むと、既に座席に座った祥子が私たちに気づいて手を振った。