主婦だって恋をする

教えられた斎場は隣県にある彼女の実家近くで、俺はすぐにでも家を出なければならなかった。


今日は成美が帰ってくる日だけど……涌井さんの通夜も大事だ。


俺はクローゼットから引っ張り出した喪服に着替え、もう一度、成美に電話をかけてみた。



『おかけになった電話は……』



……昨日と、同じだった。



「帰ってくる……よな?」



小さな不安がよぎったけど、ゆっくり悩む暇はなかった。


俺は急いで慣れない革靴に足を突っ込み、家を出た。


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