主婦だって恋をする

焼香を終え、胸に何かがつかえたような気持ちのまま斎場を出た俺はタクシーを拾おうと大通りへ歩き出した。


マナーモードにしていた携帯を開くと、成美からの着信があった。



「――――成美」



その名前を見ただけで、泣けてきた。

成美の胸で思う存分弱音を吐いて慰められたい……

『慶のせいじゃない』と、優しく頭を撫でて欲しい。


だけど………もし、戻って来てなかったら……?


旅行中に電話が繋がらなかったのは旦那と楽しんでいたからで、この着信の用件は旦那とヨリが戻ったから俺の家から出ていく、とか……


一旦悪い方向に考えると止まらなくて、電話をかけ直す勇気をすっかり無くしてしまった。


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