主婦だって恋をする

――夜更けに家に着いた。


タクシーを降りておそるおそる顔を上げると、二階の俺の部屋には明かりが点いていた。


よかった……帰ってきたんだ。


急いで外階段を駆け上がり、はやる気持ちを抑えて玄関の鍵を開けた。



「成美………!」


「おかえりなさい、今までどこに……」



部屋から出てきた成美は俺の喪服姿を見て、悟ったようだった。



「誰か……亡くなったの?」


「うん……俺のせいで」



俺は靴を脱いで廊下に上がり、成美を抱きしめた。



「慶……?」



成美はいたわるようにゆっくり、俺の背中をさすった。



「どうしよう、俺のせいだ……」



成美の体温があったかくて優しくて、俺はたまらずしゃくりあげた。


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