バレンタイン・キッス

*好きなんて言えない



みんなの川村くんは、今日も体育館で絶好調に動き回っている。

「榛名!シュート!」
「まかせろ、よっ」

ボールのパスを受け取り、軽々とステップを踏んでレイアップシュートを決めた彼に歓声がわいた。

黄色い声が体育館中に響く。

たかが、部活のチーム戦でレイアップシュートを決めただけなのにこの歓声量はいかがなものだろうか。

なんて卑屈な声が漏れそうになる。


「相変わらず人気だねぇ。川村」
「…一回盛大に転けたらいいのに、っだ!!?」
「おい、悪口うるせーよ」
「ボールで殴るなっ」

いつの間にか背後に立たれ、バスケットボールで殴ってきた彼が、噂の川村くんこと川村榛名。

一年生の時からエースで、2年の副キャプテンを任されるほどの実力者。
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