十人十色の十恋物語<短編集>
朝しか会えない恋しい人は、
この時間は何をしているのかな?
と考えながら駐輪場へ。

考えごとして歩いているとろくなことがない、
線路につまずき思いっきり転倒した。

ほらよくあるじゃん、
マンガとかで顔面打っちゃうやつ。
マサにそれ!

立ち上がることもしたくない。
周りに誰かいたらどうしよう。

走ってくる足音と共に、
ふみきりの音。
えっ?
私どうなるのかな?

私と荷物を抱えてくれた優しい人がいた。


「 大丈夫?
顔以外に痛いとこある? 」


顔以外に?
やっぱり見られていたんだ。

何も言えないでいた。


「 今日のオレは、
鉛丹さんで始まり鉛丹さんで終わった感じだなぁ。
救急車よんだから、
オレ仕事終わったから一緒についていくからね。
大丈夫だよ。 」


恋しい人が、
そばにいてくれてるのと。

私の名前を覚えてくるたのと。

すごく心配してくれてるのと。
嬉しくて声をだしたら泣いてるのがバレそうだから何も言えなかった。


「 どこか痛いの? 」


私は首を横に振った。


救急車の音が遠くでしている。


「 心が痛いです。
大好きな人が
こんなにそばにいたら苦しいです。 」


私は、やっと顔をあげた。
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