十人十色の十恋物語<短編集>
私の恋しい人は、
優しい笑顔で私を見つめていてくれた。


「 オレだって気になる女の子が、
あんなに激しく転倒したら…
なんで早く気がついてあげれなかったんだろうって。
こんなに顔にキズつくらなくてもすんだのに。 」


私の頬に触れた手は優しかった。


「 もしさぁ。
ここキズが残ったら、
オレに責任とらせて! 」


「 なんの責任ですか? 」


「 キミが歩いてるのを見てたんだ。
いつもの電車じゃなかったんだなぁって。
だから転びそうになったのも気がついて走り出したんだけど…。 」


恋しい人の手に触れて。


「 キズが残らなかったら? 」


「 それは…。 」


「 顔のキズはいつか消えるよ。
でも心が痛いのは治らないよ。
だから…。 」


恋しい人は私のくちびるに指をあてて


「 オレ責任とるね。
早紀ちゃんと一生一緒にいる。
オレと将来、
結婚してください。 」


この言葉を聞いたあと、
救急車で運ばれた。

足が骨折していたのと検査のために病院に二泊した。

私の恋しい人は、
時間をみつけては来てくれる。

付き合ってもないのに、
プロポーズされちゃったけど…
私、返事してないや。


「 あの…
冬埜さんって呼んでもいいですか? 」


早く足が治って
冬埜さんが待つ改札へ。

あの場所で
ちゃんと返事をするんだ。


大好きな気持ちをいっぱいこめて。





end


2012/03/08
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