真紅の世界



視界には、焦っているユリウスの姿が見えるのに。それなのに、口をパクパクしているだけで、さっきまで聞こえていた声すら聞こえなくなっていた。


震えを止めたくてぎゅっと自分を抱きしめてみる。けれど、内で渦巻く黒い渦は消えるどころか増えていくようだった。それが怖くて、思いっきり目をつむる。





自分に何が起こっているのかが分からない。

それすらわからないのに、その“何か”に底知れぬ恐怖を感じる。




こうやって考えている間にも“黒”が広がって、自分の中からあふれ出しそうになる。



それが“ダメ”なことだと、本能が叫んでる。


私はこの自分の中の“何か”を、身体から出しちゃいけない。


出したら“怖い”という言葉じゃ片づけられないくらいの“何か”が起きてしまう。



だからこそ中に留めようと、自分の腕に爪が食い込むほど力を入れて押し込めようとしているのに。一向に、黒い渦は納まる気配を見せない。


これは、なに?

どうしてこの“黒”は、急に私の中に生まれてきたの?
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