真紅の世界



そして自分の身体を傷つけることを少しもためらわずに、レティを守ろうとしていたのだ、彼女は。


“近づくな”と力のない、それでも意志のこもった眼で睨みつけられて、自分らしくもなくその目に見惚れてしまった。
そのことを、アレンは心底後悔していた。


「お兄様、サラの手当てをお願いします。……出来れば、お城で」


お願いと言いながらも、レティの瞳はそうしないと泣き出しそうなほど潤んでいた。


「分かってるよ。 彼女がどうしてここにいたのかも聞かなきゃならない。 それに、傷つけてしまったお詫びもしなくてはならないからね」


そう言いながら、アレンは茶色の不思議なつなぎを着たサラを、言葉とは裏腹に乱雑に抱き上げる。それから「リリー」と呟き、目の前に大きな赤い鳥を召還した。


鳥と言っても尾は2本あり、頭には長い触角のようなものが2本生えている。

アレンに挨拶するように一つ大きく頭を下げたリリーは、羽を広げ地面へ添うように降ろす。


アレンが乗りやすくするためだ。

抱くというよりも、荷物を担ぐようにしてサラを抱えたアレンは、その羽の上を歩いてリリーの背に乗った。その後にレティが続く。

レティがその背の上に座って、しっかりアレンに捕まるのを待ってから「城まで」と言葉少なに告げる。
命令された大きな赤い鳥は、一つ鳴いてから羽を広げて、一直線に城へと向かっていった。





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