真紅の世界

ボロボロ流れる涙を、ユリウスは長い指で何度も何度もぬぐってくれる。


「大丈夫、俺はサラを傷つけないし、サラにたくさん幸せが来るようにしてやる」


なんて言ったってサラのファーストキスを貰ったからな。



おどけるように付け加えられたセリフに、溢れる涙はスイッチを切ったように止まった。かわりに体中の熱が一気に顔に集まってしまう。



――そうだ、私“シンク”にいろんなこと暴露しちゃってたんだ!!



そのことに思い当って、今度は一気に顔から血の気が引いていく。


私、シンクにいっぱいいろんなこと話してた。
生い立ちから、名前の由来から、包み隠さず。

っていうか相手が使役できる小さな悪魔だと思って、自分から抱きしめたり自分からキスしたりもしてた。それをユリウスに置き換えたら、私って相当痴女みたいなことしてる。

血の気の引いた顔でユリウスを見ながら口をパクパクさせる私を、ユリウスは少し眺めた後、ブッという盛大な吹き出す音を皮切りに文字通り爆笑した。

なんか超絶美形がお腹を抱えて爆笑している様は、とても違和感を感じる。
ましてや真っ黒で出で立ちだけは“魔族”なのに、一つに束ねた髪がゆらゆら揺れるほど笑っている姿は似合っていない。

……でも、そうやってユリウスが笑ってくれるから、私はさっきまで胸の内を占めていた罪悪感も、自己嫌悪も、シンクに対しての自分の行いも、さっきよりは薄れて少しだけ余裕が出来ていた。

だから爆笑しているユリウスにつられて、クスクスと笑ってしまったのかもしれない。
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