惑溺

2

 


翌日。




夕暮れ間近のイブの街を、ひとり店に向かって歩いていた。
見上げると、今にも雪が降り出しそうな重い鉛色の空。

「雪が降ったらホワイトクリスマスなのにね。
サンタさん雪降らせてくれないかなぁ」

すれちがった小さな女の子が、赤いほっぺたをはずませながら笑う。

……そうか、みんなクリスマスに雪が降るとうれしいのか。
俺にとってはホワイトクリスマスなんて、苦い思い出が蘇るだけなのに。

クリスマスなんて言ったって、いつもと同じ仕事して終わるだけ。
俺には関係のない事だけど。
空を見上げながら大きくため息をつくと、息は白い煙になって高くのぼって消えた。
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