惑溺
そうか、もうそうやって笑ってくれるんだ……
あの頃は見ることのなかった由佳の笑顔に、三年という時間の長さを実感する。
きっと、今が幸せだから俺にも笑いかけれるんだろうな。
そう思いながら視線を落とすと、赤いマニキュアの塗られた細い指が目に入った。
本屋の紙袋を持つその手に何故だか少しだけ違和感。
そんな俺の違和感に気づかない由佳は
「リョウ、久しぶり」
そう言って俺を見上げて微笑んだ。
「これから仕事なの?」
「ああ、そう。店に行く途中。
由佳は?」
「私は八時から約束あるんだけど、それまで暇だから時間潰そうと思ってぶらぶらしてたの」