惑溺
 

「あー、美味しかったー!」
「いっぱい食べちゃったね」



テーブルの上に並んだお皿は、綺麗に空になっていた。



「やっぱり、美味しい物は女同士で食べるのが一番だよね」

テーブルを挟んだ向かいの椅子に座る博美が、そう言って満足そうに笑った。


私たちが予約したお洒落でかわいいレストランは、各テーブルに小さなキャンドルが置かれたり、クリスマスカラーの花が飾られたりしていて、イブのムードを盛り上げる。

見渡せば他のテーブルは見事にカップルだらけで、美味しい料理を遠慮なく楽しむ女二人は、少しだけ場違いで。
でもそんな空気をわざと楽しむように笑いながら、博美はグラスの中のワインを美味しそうに飲み干した。


「由佳、この後どうしよっか?明日せっかく休みだし、どっか飲み行く?」

なんてまだまだ飲む気満々の博美に、思わず苦笑いした。
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