惑溺
「まぁ、とりあえず出ようか。
こんなに混んでるレストランにいつまでも居座るのも悪いし」
そう言いながら立ち上がりバッグを持つ。
「今日は私が奢るよ。博美の結婚のお祝いに」
「なに言ってんの。
いいよ、由佳にはしっかりご祝儀もらったんだから。
女同士なんだしキッチリ割り勘しよ」
博美にそうきっぱりと断られて、私は笑いながら頷いた。
バッグの中に手を入れて手探りでお財布を探していると、ふと指先に違和感。
バッグの底に小さな堅い感触。
あれ、こんな所になにか入れたっけ……?
入れた覚えのないそれを掴んでバッグの中から手を出すと、
「あ……」
自分の手のひらの上の銀色の鍵に、思わず驚きの声が漏れた。