近いようで、遠い存在のキミ (完)
 

ハルカの顔が私からゆっくりと離れる。


「ごちそーさま。」


ハルカが唇をペロッと舐めて、にやっと笑った。


そして、思い出したかのように、腕時計を見ている。


「あ、やべ。時間」


ハルカが私の頭をポンポンと撫でる。


「じゃあ、ありがとな!助かった」


ハルカの笑顔。


「――…」


私は…何も返せない。


言葉も表情も、時間さえも、固まったまま。


ハルカが去っていく音だけを、呆然と聞いていた。



―――…


どれくらいそこにいたんだろう?


ようやく動き出した私の時間。


「…え?なに…?」


まだ起こったことが理解できない。


私はそっと、指で自分の唇に触れる。


まだ残る、ハルカの唇の柔らかさ。


脳裏に焼き付いているハルカの表情。


い、今の…キスされた!?


「うそ…」


どうして…何で!?




もう…意味がわからない。

 
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