ランデヴー II
「川口さんごめんね、忙しいのに付き合ってもらっちゃって。仕事、戻ろうか」


何だかいても立ってもいられなくなった私は、そう言いながら立ち上がった。



倉橋君に会わなければならない。


会って、事の真相を確かめたい。


そう思ったから。



川口さんは突然そんなことを言い出した私のことを不思議そうな顔で見上げつつも、一緒に席を立つ。



「あ……はい。傷、だいぶ目立たなくなりましたよ」


「本当? 有り難う」


「いえいえ。もしまた何かされたら言って下さいね」


ニッコリと笑いかけてくれる川口さんに、私は心の底から感謝した。


こうして私のことを気にかけてくれる人がいるということは、とても心強い。



「今度一緒にランチしようよ。奢るから」


「え、いいんですか? ラッキー!」


わざと明るく振る舞うようにして、私達はフロアへと戻った。


表面上は、何事もなかったかのように振る舞いたかった。
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