ランデヴー II
どうしてあの時、倉橋君の傍にいることを選ばなかったんだろう。


幾度となく繰り返しても尚尽きることのない後悔が、再び私の心に顔を出した。



「もう……私のことなんて、何とも思ってないよ、ね……?」


グッと眉を寄せて涙を堪え、ただ空へと向かい投げかけた言葉が、私の口から離れて虚しく響く。


悲しみに暮れてその顔を見つめても、彼の目が開くことはない。



「ばか……」


そう呟き震える指をそっと伸ばすと、ずっと触れたかった彼の柔らかい茶色の髪を優しく撫でる。


ふわふわと手のひらをくすぐる感触に少しだけ癒やされ、思わず笑みがこぼれた



私はそのまま茶色い髪の隙間から覗いた額に顔を近付け、キスを落とす。


不思議と自然な流れに、何故か躊躇いはなかった。



だが「チュッ」と音を立てて唇を離した瞬間、一気に何とも言えない背徳感に襲われる。


心臓はドクドクと狂ったように暴れ回り、唇が震え、背筋が震え、心までも震えた。
< 287 / 408 >

この作品をシェア

pagetop