ランデヴー II
でも本当はそれよりももっと他に、何か話したくない理由があったのだろうか。


じっと紗英ちゃんを見つめる私に、彼女は「倉橋君が私に何て言ったか、教えてあげる」と言った。



「倉橋君ね、ゆかりちゃんのこと今も昔もこれからも、ずっとずっと大切な人だって言ったんだよ。だから、好きなの? って聞いたの。そしたら、「はい」って。それはもうきっぱりと。だからかな、何かもう余計に許せない気持ちが込み上げてきて……。あの時は叩いちゃって、ごめんね」


あぁ……彼が私に「言いたくない」と言ったのは、このことだったんだ。


私はやっと、あの時の倉橋君の気持ちがわかったような気がした。



そんな話をしたこと、もちろん私には言えないだろう。


私達の気持ちは完全に擦れ違っていたし、言えばそれは告白も同然になってしまう。


私だけが知らなかった倉橋君の気持ちを今やっと知り、熱い何かがグッと胸の奥から込み上げてくるのを感じた。



紗英ちゃんは少し鼻をすすりながら、でも妙にサバサバとしていた。


きっぱりと諦めた、という気持ちの表れなのだろうか。



「私きっと、倉橋君から引導渡されたんだよね。毎日電話とかメールしてたから、私の気持ち気付いてたんだと思うの」


何かちょっと恥ずかしいな、と言って肩を竦める紗英ちゃんを、私は笑うことなんてできない。


むしろ、羨ましいと思う。
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