猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


「言うねー。スピードなんか速いつもりだったし、音にしても、“殺されるかもと気を張りつめなきゃ気づかない”だろうにさ」


死角への感知――視線を置かない場所にまで気を置くとは、かなりの根気が要りようだ。それこそ、落ちるかも分からない葉先の雨粒をいつでも拾える状態でいるような。

ただの無邪気な少女と侮れば、簡単に喉元を噛まれるだろう。


「猫かぶりだ。可愛い顔して、案外獰猛な猫ちゃん」


「かぶっているつもりはありませんよー」


レインの軽口を否定するも、先のことがあってはミカエルもエレナの評価を考えてしまう。


何にしても。


「下らない。顔合わせは済んだのだから、もう用はないだろう。仕事の邪魔だ」


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