猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


「今回、視察という名目で私が行くことになった。一週間ほど戻らないが、その間のことはお前に任せる」


決して書類から目を離さず、他人事のように言うルカの言葉に、補佐たるミカエルは言葉を詰まらした。


ルカの階級は大佐。上の階級にしても、政権をいじるまでとなれば大将ほどの階級が要りようだ。


それなのに、バルギルド国への視察などミカエルには“体のよい犠牲”に聞こえた。


油断ならない国、力こそが全てと強き王がいる国がこうして下手にでているのだから用心するのは当たり前だ。


――いや、用心したからこそ、上はあえて、ルカを選んだのか。


「切り捨てじゃ……ないですか」


唇を微かに噛みしめ、ミカエルは親指を包むように拳を作った。


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