さくら色 〜好きです、先輩〜
「少しは仲良くやりなさいよ。葵と恭介は何かあればすぐ言い合いになるんだから」
そう言って、里美はやれやれと半笑いを浮かべた。
「だって恭介がさー、いちいちちょっかい出してくるんだもん」
「まっ、喧嘩するほど仲が良いってことか」
「ねえねえ、それよりさ!里美は……っ!」
えっ……今の…
私は咄嗟に後ろを振り返った。
「…いない……?」
「葵?どうしたの?」
気のせい?
今、確かに擦れ違ったのに…
「…ううん。何でもない」
…そうだよね、ここにいるわけないよね。
あの人がここに…
「ふ〜ん…それよりさっき何か言い掛けた?」
「えっと…何だっけ?忘れちゃった」
「もう!葵ったら。ほら教室行くよー」
私は「うん」と頷きながら、もう一度後ろを振り返った。
そこには微かに爽やかな香水の香りが残っていた。