さくら色 〜好きです、先輩〜

これが試合が始まる前に伝えたかったこと。

一か八かの、運命の賭け。


「サッカー部には入部しないと言うなら、もうしつこく誘いません。もう関わるなというなら先輩に近付きません」

「一年がここの球技大会のサッカーで優勝するなんて不可能に近い。わかってる?」

「可能性は0に等しいかもしれないけど、私は本気です。私の本気を先輩に伝えるには厳しい状況じゃないと全部伝わらない、意味がないんです」


私は先輩の目を瞬きもせずに見つめた。

私の本気が伝わるように。


「わかった。その話、乗るよ。お互い頑張ろうな」


そう言って、右手を差し出す先輩。

私はその手に自分の手を重ね、硬く握手を交わした。


その後、先輩が校庭に戻って行くと、すぐに里美が駆け寄って来て私を抱き締めた。


「葵。頑張ろうね」

「うん。里美、ありがとね」


何処からかチリリーンと風鈴の音がする。

時期としては少しだけ早いけど。

その涼しげで透き通るような音色が心に染み渡り、心が癒された。




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