さくら色 〜好きです、先輩〜

私が見ているのに気付いたのか、男子生徒はゆっくりと振り向いた。


無造作にセットされている茶髪の髪。

腰まで下げたズボンと緩く結んだネクタイ。

ヨレヨレになった鞄。


少しだけ日に焼けた肌。

透き通った真っ黒の瞳。


先輩は髪を染めたり、あんな風に制服を着崩したりはしない。

それに纏う空気も私の知ってる先輩とは天と地ほど違う。


だけど、あの小麦色の肌や顔立ち、真っ黒の瞳は先輩と同じ。


その人は両手をズボンのポケットに入れて、私が瞬きするのを許さないぐらいジッと見つめてくる。

息をするのも忘れてしまいそう。



まるで時間が止まったような…

ここだけ世界が違うような…


不思議な感覚。


私達の間にはただただ桜が散っていく。


< 22 / 499 >

この作品をシェア

pagetop