さくら色 〜好きです、先輩〜
「藤田先生いないですね」
保健室の扉を開けると薬品の匂いが微かに鼻を掠めた。
密室に再び二人っきりって考えただけ緊張して落ち着かない。
「消毒液は…これか?」
「あ!私やります!」
先輩は倒れた時に腕を切って出血していた。
私のせいで怪我させちゃうなんて本当に申し訳なくて消毒中に何度も先輩に謝った。
だけど先輩は「これ以上謝ったら罰ゲームな」って言って笑った。
傷口を消毒し、ガーゼを当ててテープを綺麗に貼った。
「出来た!終わりましたよ、先ぱ…」
勢いよく顔を上げると鼻先がくっいてしまいそうなぐらい近くに先輩の顔があった。
私は慌てて先輩と距離を取る。
「す、すみません!私、ここ片付けちゃいますね」
「待って」
私が立ち上がったと同時にパシッと手首を掴まれて全く身動きが出来なくなった。
先輩は真っ直ぐな瞳で私を見つめてくる。